2019年4月、瀬戸黒森から篠山へ。:アケボノツツジ咲き始めてます

4月22日のこと。山岳部のF君、福田百貨店(@宇和島市御槇地区)の黒田さん、黒田家キッズと一緒に、瀬戸黒森から篠山を縦走してきた。

篠山に登ったことは過去に2回ほどある。いずれもアケボノツツジの時期だった。その時山頂から見えていた瀬戸黒森まで続く稜線に心惹かれ、いつか歩いてみたいと思っていた。

また、瀬戸黒森の西南尾根に風車の建設計画が持ち上がっていることについて、かねてより黒田さんは、「移住者を増やして集落を将来に残していくという観点からは、建設しない方が賢明」と主張してきた。

恐怖の白いタケノコ | 田舎暮らしをおすそ分け いなかマガジン | いなかパイプ

とはいえ、一度建設する方向で動き始めた流れをくい止めるのは相当難しいようで、孤軍奮闘を強いられているとも聞いている。だから、友人である黒田さんが守ろうとしている環境を、一度、自分の足で歩いてみて、自分の目で見て確かめたいと思った。こうした考えも、今回の山行の大事な動機の1つである。

さらに、「せっかくだから…」ということで、山岳部のF君も誘ってみると、2つ返事で「行きます!」とのレスポンスが。いちおうバリエーションルート主体の山行になるから、山岳部的文脈に照らしても、ちょうどいい練習になるのではないかと思った。

そういうわけで、今回は、以下の図のようにコースを取った。まず、Goal地点(篠山第一駐車場)に車2台で行く。そして、Goal地点に車1台をデポ。もう1台の車に乗り合わせてStart地点まで移動する。もう1台の車はStart地点でデポ。そこから山行開始。山行終了後、Goal地点に停めておいた車に乗り込み、Start地点まで移動。デポしておいたもう1台の車も回収する、という作戦である。

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最初は作業道(林道)からのアプローチ。

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尾根にあがってしまったあとは、気持ちのよい自然林のトレイル。瀬戸黒森まで、急登らしい急登はなく、ゆったりと歩くことができた。トレランの人を連れてきたら喜んでもらえそうである。

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ところどころに椿も自生していた。

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木登りできる木も要所要所にあって、フィールドアスレチックさながら。

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道の真ん中にギンリョウソウの芽らしきものも発見。成長すると宇宙植物のような不思議な花になるので、黒田キッズにも見せてあげたかったな。

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標高900~950mくらいの地点だったと思うが、向かって左手に鉄塔があった。風速を計測する機械がついているらしい。

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ちなみに、この風速計測装置のある地点は、下図に示した合計10基の風車建設予定地点のうち最も北東(右上)のものから数えて2つめの地点と思われる(データは「えひめ風車NET 南予の風車計画一覧 - Google My Maps」から借用し、一部加筆も施してある)。こうして建設予定地を見てみると、この日歩いた尾根の上だけでも、6基もの風車が立ち並ぶことになる。当然ながら管理用の自動車道も整備されることになるだろう。そうなるとあの気持ちのよいトレイルもなくなってしまうに違いない。こんなにゆったりと歩くことのできる尾根はそうそうないだけに、山歩きを愛する身としては残念である。

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瀬戸黒森西南尾根を歩いていて、もう1つ印象に残ったのは、定期的に登場する年季の入った境界杭である。山歩きをしていると都道府県境に杭が埋め込まれているのをよく見かけるけれども、こんなに年季が入っていて、わざわざ手掘りの文字が刻まれているものは珍しくないか?

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かつて、このあたりの山域では、伊予と土佐の境界の位置をめぐる争いが絶えなかったらしい*1。詳しいことはわからないが、上掲の杭もおそらく、設置の経緯を調べていくと、すくなくとも廃藩置県の頃までは遡ることができのではなかろうか。

そうこうしているうちに、13:00ちょっと前に瀬戸黒森山頂に到着。スタートが10:40なので、所要2時間20分。距離の割にだいぶかかったが、キッズと遊びながら歩いてきたことを考えると、当然といえば当然である。ここで遅めの昼休憩をとった。眺望は効かないけれども、小広くて、静かで、おだやかで、長居したくなる山頂だった。

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スタートから瀬戸黒森までは北東に向かって歩いてきたが、瀬戸黒森から篠山までの区間は南東に向かって歩くことになる。結論からいうと、この区間も気持ちのよいトレイルが続いていた。ただし1点だけ留意点がある。瀬戸黒森山頂から下り始めてすぐのあたりの尾根道が寸断されているのである。原因はムチャなつくり方をした作業道(林道)のせい。やむなく計200~300m程度(スイッチバック2回込み)、この作業道を歩くことにした。斜面側から崩れ落ちてきた石が堆積しているおかげで、ザレ場をトラバースする時のような感覚を味わったが、キッズはこんな道の方がかえって楽しそうだったりする。

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それにしてもこの作業道はどこからきてどこに繋がっているのだろう。むしろそれが気になってきた。あと、この区間だけは、冬場はピッケルが欲しいところだろう。

ちょうどいいところで作業道から尾根道に復帰してしばらく進むと、篠山トンネルの直上に到着。ここがちょうど瀬戸黒森と篠山の間の最も低い地点(鞍部)になる。今後は、篠山トンネルをくぐる度に「上の尾根を歩いたことがある」と自慢することにしたい。

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ザレ場もそれはそれで楽しかったが、やはり鞍部よりも篠山寄りの区間が気持ちのよいトレイルだったと思う。木登り休憩(?)を挟みながら進んだ。ただし、終盤、篠山に近づいてくると、尾根の幅が拡がってきて、どこでも歩けるような状態になった。気を抜くと目標としている方角をロストするかもしれなかったので、念のためシルバコンパスを出して、進行方向を確認しながら進んだ。もっとも、登りの場合はさほど心配する必要はない。注意すべきなのは逆方向、つまり、篠山側から下る時だろう*2。ともあれ、地図読み的にもルートファインディング的にも、いい練習になったのではないかと思う。

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そんなこんなで、篠山山頂到着は16:10。山頂付近のアケボノツツジは満開! というわけにはいかなかったが、気の早い株だけは綺麗な花をつけていた。おそらく数日中に他の株も開花し始めるものと思われる。今度の週末はぜひぜひ篠山へ!

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youtu.be 

それにしても、いつ来ても篠山山頂(厳密には山頂の肩から北に向かって突き出している岩)からの眺めはすばらしい。

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ただし、ことこの日に限っていえば、お目当ては瀬戸黒森側のこの眺めだろう。

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というのも、篠山山頂からは、今回歩いたルートのほぼほぼ全区間を眺めることができるのである。とはいえ、思っていた以上に、本当によく見える。今回の山行の計画段階では、「あの尾根を歩いてきたんだ」という満足感がこんなに大きいとは思っていなかった。嬉しい誤算である。
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風速測定器の鉄塔もよく見えていた。ちなみに、鉄塔の左手奥にうっすら見えているのはおそらく竹ヶ島だろう。

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そういうわけで、篠山のピークハントはほぼほぼオマケのようなものだったといってよい。

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篠山からの下りはサクっと下りて、17:30にGoal地点に到着。高低差はさほどないけれども、歩きごたえはしっかりある、いいコースだったと思う。

また、アケボノツツジの時期は、篠山が最も注目を集める時期でもある。こんな時だからこそ、あえて篠山と絡めながら瀬戸黒森を紹介してみた。隣りの瀬戸黒森もすばらしい山であることを、多くの方々に知っていただきたい。

ちなみに、Goal地点である篠山第一駐車場では、長崎から来たという三百名山ハンターのおっちゃんが晩御飯を食べていた。今夜は車中泊し、明朝、篠山にアタックするようである。祓川温泉には入って帰ってくれただろうか? 

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コースタイム

Start(10:40)‐瀬戸黒森西尾根に取りつく(11:00)‐鉄塔(12:30)‐瀬戸黒森山頂(13:00-13:30)‐尾根が寸断されてできた崖(13:45)‐P922(14:50)‐篠山北尾根・西尾根分岐(16:00)‐篠山山頂(16:10-16:45)‐大杉に寄り道(17:00)‐Goal(篠山第一駐車場)(17:30)

※ 6歳児と一緒に歩いている。成人オンリーの山行ならもっと早いはず。

 

余談

ところで、この日の山行で、10年弱使ってきた登山靴のアウトソール(靴底)がはがれた。ちょうどザレ場と化した作業道を歩いている時に、右足の靴底がはがれはじめていることに気がついたが、その後はあれよあれよという間に、左右両方ともソールがはがれおちてしまった。黒田さん曰く「靴って左右同時に壊れるんだ…」(笑)

 

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 今回の山行には難しい区間がなかったからよかったけれども、岩稜歩き込みだったならヤバかったかもしれない。歩行困難になった時点が登山靴の寿命なのではなく、おそらくそのちょっと前の時点で既に寿命は尽きているわけである。今後の反省材料としてメモしておきたい。

 

*1:cf. データベース『えひめの記憶』|生涯学習情報提供システム

*2:幅の広い尾根を下る時に、主稜線を外して支尾根に迷い込み、そのまま遭難してしまうケースがけっこうある。