かえって小売店舗に人が集まっていないか?

新型コロナ禍はまだまだ続きそうである。

例の緊急事態宣言以降、飲食店を通常営業することに対して、世論の風当たりが強くなってきた。知り合いの飲食店の多くも、テイクアウトに切り替えるか、いっそのこと「しばらくお休みします」ということにしてしまった。

また、行き着けにしていた居酒屋にいたっては、「新コロ騒ぎがいつまで続くかわからない中で休業するくらいだったら、いっそのこと店を畳んでしまって、ほとぼりが冷めてから改めて新規出店し直す。家賃がもったいない」と言い始めた*1

ところで、ちゃんとデータを見たわけではないが、スーパー、ドラッグストア、100円均一などのような、巣ごもり消費のための必要物資を販売する小売店には、平時以上に消費者が集まっているようにも見受けられる。東京では、小売店に行列ができることも珍しくないらしい。ここ愛媛でも、行列ができているとまでは言えないかもしれないが、行き着けのスーパーにはやっぱりまあまあ人がいる。飲食店が軒並み休業してしまっていることも、無関係ではないと思う。

そこでこんなことを考えた。まあまあ人がいるスーパーに買い物に行く際の新型コロナ感染リスクと、ガラガラで閑古鳥が鳴いていてほぼ貸切状態の飲食店での感染リスクは、どちらが高いのか? ひょっとすると前者の方が高いのではないかな、とも思うわけである。

この点に関して、諸々ツッコミどころはあるとは思うけれども、ちょっとした模式図をつくってみた。

1枚目の図は、小規模の飲食店が適度に分散的に立地していて、住民(消費者)はそれらの飲食店を食堂代わりに使っている地区をイメージしている。ちなみに点線の矢印は、「商品の流れ」ではなく、「買い物出向」を表している。

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上の図の想定だと、食材の買い出しは、少数の飲食店主によって担われることになる。飲食店主は、食材を、取引先の卸売業者から仕入れたり、あるいは近所のスーパー(小売店)で仕入れたりしている。やや非現実的な想定かもしれないが、この地区には、スーパーが1店舗しかないことにしよう。この図の場合、飲食店主たちが、あたかも消費者の代表を演じるかのように、小売店舗(スーパー)で食材を仕入れていることになる。消費者全員が小売店(スーパー)に押し寄せるよりも、小売店(スーパー)の混雑具合はマシなものになるはずである。

ところが、飲食店がなくなってしまうと、消費者は、自ら小売店舗(スーパー)に食材を購入しに行かなくてはならなくなる。そこで、すべての飲食店が休業ないし閉業した場合を想定して、2枚目の図をつくってみた。

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 地区に1店舗だけあるスーパーには、当該地区の住民(消費者)全員が押し寄せることになる。しかも、図では、住民(消費者)が6人しかいない地区を便宜的に想定しているが、実際には、もっと多くの住民(消費者)が存在するはずである。

2枚目の図の世界の方が、ウイルスが蔓延しやすいという考え方もできるかもしれない。そして、今現在の日本の状況は、どちらかというと2枚目の図の方に近いのではないか。
生活必需品、とくに食べ物の供給体制については、小さな飲食店も含めて、もう少し柔軟に考えてみる余地があるかもしれない。

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もちろん、上記の考察には、多くのツッコミどころがある。

1枚目の図は、地区住民全員が毎日外食し続ける状況を意味しているから、非現実的すぎて頭にスっと入ってこないという人もいるだろう。

また、(仮に行列ができていたとしても)必要なものをサっと買ってサッと帰るだけの小売店での感染リスクは、相対的に長時間店に滞在し、マスクを外して口に食べ物を入れるような飲食店での感染リスクよりも、どう考えても低いだろう、というお叱りの声も聞こえてきそうである。

売店舗(スーパー)に消費者が集まりすぎている問題が仮にあるとしても、通信販売や宅配サービスを充実させることで、その問題は克服できるのではないかという意見もあるだろう。

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まだまだ考察が粗いので、ツッコミどころの多い議論になってしまてはいるけれども、そうはいっても、飲食店が軒並み休業・閉業することで、物販の小売店舗の方に平時よりも多くの消費者が集中し、新たな感染リスクが生じる可能性もある。この点については、上記の単純なモデルからでも指摘することができるだろう。
加えて、ガラガラの飲食店が遊休リソース化している。単純に何とかしてあげたいとも思うし、難局を乗り切るために活用すべきではないかとの考え方もあるように思うわけである。この問題、ひきつづき考えていきたいと思います。

*1:もちろん、しばらく店を畳んでも食いつなげるだけの蓄えもあるし、無借金だし、出店時の投資額もとっくの昔に回収し終わっているから、こういう選択肢を検討できるという側面もある。