松丸大作戦レポ(的なもの)

9月1日と2日の2日間、「楽しい!かわいい!をつくる松丸大作戦」に参加してきた(3日目のワークショップには「家庭の事情」で参加できず…)。どういう趣旨のイベントかどうかについては、前回のエントリーもご参照ください。

nyamaguchi.hatenablog.jp
9月1日(金)18:00~20:00は、市原正人さんと藤田まやさんの講演。円頓寺のまちづくりについて、ナゴノダナバンク(ナゴバン)設立の経緯から、近年のリノベーション事例にいたるまで、じっくりと解説いただき、なおかつ、お2人のかけ合いが漫才のようでおもしろかった。市原さんがナゴバンの「実績」を紹介しつつ、藤田さんが「裏話」を補足し、市原さんの「権威」性を少し削ってバランスをとっていくイメージ*1。どこまで狙ってやっているのかはわからないが、この進め方で市原さんや藤田さんと参加者の距離がぐっと縮まり、すごく効果的だと思った。

この日は松野泊。僕は吉野生の正木酒店が経営している香霞楼という民泊に泊まらせていただいた。

nametoko.net

正確に記憶していないが、築年数160年とおっしゃっていたか、180年とおっしゃっていたか…、それくらい古い古民家を活用した民泊。建てられたのは安政の頃とのこと。佐賀の乱に敗れたあとの江藤新平が高知に逃れる際、ここに泊まったものの、追手が迫り、やむなく塀を乗り越えて逃げたんだとか。

庭を眺めながら歯を磨くことができる贅沢な洗面台

庭を眺めながら歯を磨くことができる贅沢な洗面台

洗面台のすぐ前の建具

建具も古くていい感じ

客室

客室でワーケーション気分を満喫

2日目、9月2日(土)の集合時刻は13:00からである。少し時間があるので西土佐(四万十市西土佐地区)~四万十町方面にも足を延ばしてみることに。まずは、「定点観測」的な意味も込めて、西土佐の「よって西土佐」と十川の手前にある「道の駅四万十とおわ」へ(「よって西土佐」の写真は撮り忘れた…)。 

道の駅四万十とおわ外観

道の駅四万十とおわ外観

道の駅四万十とおわ(看板)

道の駅四万十とおわ(看板)

「道の駅四万十とおわ」といえば、立ち上げより長年にわたって管理を任されてきた四万十ドラマが2017年度末に指定管理業務から外れることになり、全国の地域づくり関係者をざわつかせたこともまだなお記憶に新しい*2。その後、2018年度から2020年度まで株式会社四万十とおわという会社が、2021年度からは株式会社とおわという会社が指定管理業務を担当。現在の株式会社とおわの代表は、四万十ドラマで経験を積んだ方らしく、機会があればお話しをお聞きしてみたいところである。実のところ「騒動」が起こってから「道の駅四万十とおわ」を訪問するのは初めてだった。

その帰りに半家(はげ)の沈下橋を見学。一雨去った直後だと本当に「沈下」していて危険だが、そこから少しだけ水位が下がったくらいの、見学にはちょうどいいあんばいの沈下橋を見学することができた。

半家沈下橋

半家沈下橋

youtu.be

13:00からの「松丸大作戦」2日目。1日目は「講演会」の色彩が濃かったけれども、2日目に至って、いよいよ実地のフィールドワークとワークショップがスタート。首から名札をぶら下げつつ、参加者同士の自己紹介。そのあとフィールドに繰り出し、こういった機会でないと中を見せてもらいにくい物件を内見させていただきつつ、松丸地区の旧街道を散策した。

松丸フィールドワーク(その1):建築家・市原さんの解説がつく贅沢なツアー

建築家・市原さんの解説がつく贅沢なツアー

地元の人も普段は気に留めない小径にまで話題がおよぶ。

地元の人も普段は気に留めない小径にまで話題がおよぶ。

松丸の旧街道はゆるやかな坂道

松丸の旧街道はゆるやかな坂道

郵便局の跡地なんだとか…

郵便局の跡地なんだとか…

このファサードはむしろ取り除かなくてもいいかもな。

このファサードはむしろ取り除かなくていいかもな。

2階から街道を見下ろすと気持ちよさそう。

2階から街道を見下ろすと気持ちよさそう。

8月末までおばあちゃんが1人で営業していた書店跡地

8月末までおばあちゃんが1人で営業していた書店跡地

病院跡地だそうです。

病院跡地だそうです。

パチンコホール跡地

パチンコホール跡地

松丸地区はポテンシャルのある物件ばかり。何件かの物件は内部も見せてもらうことができた。が、物件内部はいちおうはプライベート空間。ブログに掲載してしまうのは自粛しておこうと思う。

思ったことを1つだけ。松丸は「Rの残るまち」だと思う。美容室の窓枠、内見した物件の床の間、飾り窓、いたるところに曲線美が。こういうのって職人さんの「ひと手間」なんですよね。「標準化」された建材を用いる現代の大手メーカー製の住宅には、こういうものの入り込む余地がほとんどない。「Rが残っている」のは、地元の工務店や大工さん、さらには左官やさんが、遊び心を発揮しながら仕事をしていた時代の建物を大事に残してきたからなのである。こういうものを残していくことができれば、もう5~10年後の松丸は1周回って「訪れたいまち」のトップに躍り出るかもしれない。

ちなみに、この日はちょうど予土線駅前マルシェというイベントの開催日。酒蔵(正木正光酒造)から松丸駅へと下っていく通りに、出店が立ち並んでいた。

酒蔵(正木正光酒造)から松丸駅方面をのぞむ

酒蔵(正木正光酒造)から松丸駅方面をのぞむ

役場に戻ってから、ワークショップらしい取り組みを少々。まず、松丸のポテンシャルと課題について自由に意見を出し合った。

松丸のポテンシャルと課題

松丸のポテンシャルと課題

この手のワークショップにはやはり多様な立場の参加者が集うべきだろう。月並みな感想ではあるが、自分1人では思いつかない論点が目白押しでおもしろかったし、何より勉強になった。

次いで、この日見た物件を活用しつつ、つくれそうなもの、つくってみたいものをアイデア出し。

松丸でつくってみたいもの、つくれそうなもの

松丸でつくってみたいもの、つくれそうなもの

こういう夢あふれる妄想を語っている時が一番楽しい。ここで終わりになってもいけないのだけれども、この楽しい瞬間もやはり大事にしたいところである。

正確な記憶ではないけれども、市原さんのコメントの中で印象的だったのが「どれもその気になったら実現しそうですね」。このタイミングでのこのセリフ、うまい! 「商店街オープン」の序盤でも、おそらくは毎回こういうことを言ってるんじゃないだろうか。

でもハッタリでも何でもなく、たしかにそうなんですよね。関係者の理解が得られて、継続的に関わる人さえ出てきてくれれば、あとはなんとでもなるアイデアばっかり。

3日目のワークショップには「家庭の事情」で出席できなかった。どんな議論になっただろうか? 途中まで関わると続きの議論が気になってしまう。次の回(17日)。参加できるよう調整してみたいと思う。

 

*1:個人的には、ビートたけしは自らの権威性を自ら破壊するところに特色がある、と分析した稲増龍夫さんのメディア論を思い出した。cf. 稲増龍夫(2003)『パンドラのメディア:テレビは時代をどう変えたのか』筑摩書房.

*2:四万十町総合交流拠点施設 道の駅「四万十とおわ」指定管理業務終了について | 株式会社四万十ドラマ