ストリップ劇場物語

「ストリップ劇場物語」というテレビのドキュメンタリー(を録画したもの)を視聴した。テレビマンユニオン制作による50分強のドキュメンタリー作品で、元々は、2018年6月1日にBSフジで放映されたものらしい。

序盤こそ、筧利夫さん、広末涼子さん、杉田成道さんが、実際にストリップショーを観覧し、感想を述べ、そのまま踊り子にインタビューするシーンがあるものの、それ以降、この3人はまったく登場しなくなる。筧さんや広末さん目当てでこの作品を視聴すると、おそらくガッカリすることになるので、ファンの方はご注意されたい。

このドキュメンタリーの主人公は浅草ロック座の南まゆさんと武藤つぐみさん。新しい公演を準備段階から公開まで追いかける形式のドキュメンタリーである。
直接的にそういうナレーションが入っていたわけではないが、この番組が視聴者に伝えようとしているメッセ―ジは、おそらく以下のようなものであろう。

 

  • ストリップは「単なるやらしい見世物」ではなく、研鑽を重ねたプロの踊り子たちによる立派なショービジネスである。


アザだらけになりながらポールダンスの練習をする武藤つぐみさんの映像が印象的だった。
近年、ストリップへの社会的イメージが変わりつつあることも、番組のトーンに影響を与えている。気軽に観覧する女性客も増えているようである。番組の中でも、武藤さんについている女性ファンの多さへの言及があった。

番組内では、ストリップ劇場の新しい試みとして、ニュー道後ミュージックの取り組みも紹介されていた。というのも、ニュー道後ミュージックでは、地元松山のアーティストとのコラボレーションイベントの機会を増やしているのである。踊り子として登場していたのはゆきみ愛さん、地元アーティストとして登場していたのは blue lagoon stompers の面々と仙九郎さんだった。

 

追記(2020/04/03)

上記の「ニュー道後ミュージックでは、地元松山のアーティストとのコラボレーションイベントの機会を増やしている」と関連して、以下のような論文を書かせていただく機会に恵まれた。

https://opac1.lib.ehime-u.ac.jp/iyokan/TD30295547

  • ニュー道後ミュージック社長の木村さん
  • コラボストリップのアイデアを木村さんに提案し、自ら実践した、踊り子の牧瀬茜さん
  • 地元アーティストとして踊り子とコラボレーションするのみならず、踊り子と他の地元アーティストとの間の窓口的役割も果たしているblue lagoon stompersの白石さんと吉井さん

たちへのヒアリング調査をもとに、コラボストリップ成立の経緯や定着要因について、不十分ながらも検討を試みている。ご興味のある方はご高覧いただきたい。

また、この論文を脱稿してから、ストリップ劇場のあり方について法学的切り口からアプローチするブログの存在を知った。

stg318.hatenablog.com

このブログにもっと早く出会っていれば、ストリップ劇場を取り巻く法制度についてももっと勉強してから論文を書くことができた。自らのアンテナ感度の悪さを悔いるところである。

今治へ

昨日のこと、今治ホホホ座で開催された「3.11以降の私(たち)」というイベントにお邪魔してきた。

キャンプシアター presents 『3.11以降の私(たち)』

このイベント、入場料は野菜でOKとのこと。参加者の持ち寄った野菜を炊き出しにしてみんなで食べるらしい。よく思いつくなぁ、こんな仕組み。

ホホホ座に着くと、さほど広くはないホホホ座の屋内空間の中に、おそらくはsnowpeak製であろう…、お洒落なドーム型テントが鎮座していてビックリした。

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野菜もしっかりと集まっていた。ちなみに僕(と妻)が持ち寄ったのは、玉川の産直で購入した春菊と原木シイタケ。

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ホホホ座のコアメンバーの方々が、一生懸命炊き出しを調理してくれていた。その間に参加者たちは、劇団250km圏内の演劇を観覧(?)し、そのあと、3グループくらいに別れて、震災後の生活や原発のことについて語り合った。

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ちょうどいい具合にお腹が空いたところで、いよいよお待ちかねの炊き出しタイム。

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とはいえ、炊き出しを食べながらも、青砥さんの解説が続く。青砥さんは復興過程の東北で見てきたものをスライドにして解説してくれた。
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昨年7月の集中豪雨の時に、ここ今治ホホホ座も支援物資の集積場所になった。そういう経緯があって、今回のイベントでは、大州の方々からのお礼のイチゴがふるまわれた。

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ところで、ここのところの今治はおもしろい。そしておもしろいことの多くに今治ホホホ座がかんできている*1

先月お邪魔させてもらった「タケオとヤミーの『今治で逢いましょう』」もおもしろかった。このイベントも主催は今治ホホホ座の面々である。

タケオとヤミーの「今治で逢いましょう」

イベント内容は、トウヤマタケオさんのピアノ演奏に合わせて、yummydanceの宇都宮忍さんと合田緑さんがコンテンポラリーダンスを披露する、というものである。とはいえ、とくにコンテンポラリーダンスについてはドシロートなので、詳しい感想は胸の内に留めさせてもらうことにして、むしろこのイベントの会場になった場所のことを書き留めておきたい。

会場となったのはビサージュ(VISAGE)という、閉業した商業施設跡地である。そこそこ大きい商業施設(ファッションビル)で、バブルの頃、外部資本の出店に対抗すべく、地元の人たちがお金を出し合ってつくった商業施設らしい。とはいえ、中心市街地の地盤沈下と歩調を合わせるように業績を悪化させ、閉業。その後、遊休施設となってからは長らく眠っていた物件である。

「せめてイベントの時だけでも…」ということで、場所を開けてもらったのだろう。中心市街地にとって、そのことの持つ意義はものすごく大きいはずである。ホホホ座の吾一さんにお聞きしたところ、この日は、商店街内で「空想商店街」というイベントも開催されており、そのイベントの企画者である地域おこし協力隊員のOさんが、ビサージュの持ち主に交渉を試み、話をまとめてくれたらしい。

ずっと中が気になっていた施設なので、イベントの休憩時間に、何枚か写真を撮らせてもらった。吾一さんたちは、上階層も見てきたらしい。うらやましい… f:id:nyamaguchi:20190322204517j:plain

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松山市桜・中組地区の断崖

昨日は久万高原町に用事があった。松山市から久万高原町への往復のために通常使うルートは国道33号である。この日は、往路については国道33号を使ったが、復路についてはややマニアックな道で帰ることにした。復路の途中までは33号を使ったものの、三坂道路には入らないことにし、旧道(格下げされて国道440号になっている)を使って三坂峠を越え、そのまま道なりに行けばやがて再び国道33号と合流するところを大久保地区で右折し、奥久谷地区に下る道である。というか、この道はけっこう気に入っていて、ちょくちょく使っている。奥久谷地区では、祖谷の「かかしの里」には到底及ばないまでも、至るところにかかしが鎮座していて、まあまあおもしろい。

とはいえ、いつもは日没するかしないかの時間帯に通りかかることが多かった。だから景色を楽しむことはできていなかったのだけれども、今回は日中に帰松したので、普段見えないいろいろなものが目に入った。

今回印象に残ったのは、松山市桜地区の集落の背後(北東側)に断崖絶壁があるということ。国土地理院地図で確認してみると、どうやら標高587mの水準点から北西に伸びているテラスのようなところのフチが断崖になっているようである(下に示した地図の赤丸で囲った箇所)。

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それにしても、まんが日本昔ばなしの「吉作落とし」を彷彿とさせる、なかなかの断崖である。何か名前でもついているのであろうか?

奥久谷地区まで下りてからでも、断崖はよく見えていた。が、桜地区や中組地区からどのように見えるかはわからない。何かわかったらまたエントリーにしてみたい。

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追記(2020/04/28)

たまたま近くを通る機会に恵まれたので、断崖の空撮を試みてみた。といってもいまひとつ回り込みきらず、上記の写真に映っている赤茶じみた岩肌をしっかり撮影することはできていないけれども…

 

www.youtube.com

台北:西門から迪化街へ

3月1日、一説には台北(いや…、台湾で)でいま一番勢いがあるという西門の商店街を視察した。これがまた若者の聖地的な街で、とにかく若者…若者…若者だらけ。東京でいえば原宿あたりに相当するだろうか。

対応してくださった商店街(西門徒歩区街区発展促進会)の劉理事長は、道後温泉を訪問したことがあるらしい。また、松山市野志市長にも何度かお会いしたことがあるらしい。台北市松山市が友好交流協定を結んでいる関係上だろうか…

 

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西門の商業地域の中では、何か所かで、ストリートパフォーマンスの集団に出くわした。市政府に対してか商店街組織に対してかは聞きのがしてしまったが、ここでパフォーマンスするためにはいちおう許可がいるらしい。ロンドンの地下鉄で路上ライヴしている人たちと同じような感じだろうか?f:id:nyamaguchi:20190307004658j:plain

 

ユニクロの建物の家賃は、1ヶ月で1500万元らしい。1台湾元=3.6円のレートで計算してみると5400万円! 1フロアだけでなく多階層の家賃であるとはいえ、とんでもない価格である。

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最も地価が高いのはおそらくこのケンタッキーのある交差点とのこと。また、タイムリーなことに、このケンタッキーのビルが、いま、15億元ほどで売りに出されているそうである。同じく3.6がけしてみると54億円!

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お値段の話。あまりにケタが大きすぎて、聞き間違いではないかと不安になる。間違っていたらごめんなさい。

ところが、いま、勢いにのっているこの西門の街も、15年前は落ち目だったらしい。その時、西門の商店街組織は大家さんたちに「まず家賃を安くしましょう!」とはたらきかけた。そのおかげで今の西門の繁栄があるとのこと。

やはり、多くの衰退商店街で、再生を考えるにあたって、家賃相場を適正水準に下げる努力をおこなっている。この台北…、いや台湾の中で最も栄えているように見える商店街ですらそうなのだ、という話を興味深く聞いた。
その後、劉理事長の案内で、迪化街(てきかがい)という乾物や漢方薬の問屋街を訪問した。しかも、近年、この街にはリノベーションの風が吹いていて、いい感じのカフェや雑貨屋さんが増えているらしい。といっても、淡水河沿いを北上してから街に辿り着いたので、迪化街の北の外れの方しか訪問できていないのだが…

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迪化街のメインストリート(迪化街一段)(南向き撮影)。本当のところをいうとここから南下していったあたりの方が、より強いリノベの風が吹いているようなのだが、今回、そこまで散策できなかったのが残念。

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われわれの歩いた範囲内で見かけたリノベ物件。 古い店舗物件をお寿司屋さんにリノベーションした事例のようである。

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なおこの物件、Google Street View で見てみると、2017年4月の時点で、都市再生前進基地(URS155: Urban Regeneration Station 155)として使われていたことがわかる。

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都市再生前進基地って何だろう? と思って調べてみたら、以下のようなページがそこそこわかりやすかった。

TAIPEI 冬季号 2017 Vol.10 都市再開発クリエイティビティ 台北‧下町の魅力を遊ぶ | 台北観光サイト

勝手なイメージだが、空き店舗にリノベーションを加えつつ、クリエイティヴなスペースとして活用し、文化的な発信拠点ないし集客拠点にしていく取り組みだろうか。別府で見た platform プロジェクトのようなイメージ? また、借り手がつけば、都市再生前進基地としての利用はとりやめて、フツーにテナントとして使ってもらうという感じだろうか?(あくまで勝手な想像です)

上記のお寿司屋さんのはす向かいにある、ペーパークラフト雑貨の店が素晴らしかった(奥にはお洒落なカフェも併設されていた)。今回の台湾行きで訪問した場所の中では、「リノベ」のイメージに最も適合的なお店だったと思う。自分の記憶に留める意図もあって、500元する猫の置き物(もちろんペーパークラフト)を購入した。おそらく、お宿代を除けば、今回の台湾行きで最も高価な買い物だった。

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できることならこの迪化街をもう小一時間ほどゆっくり散策したかった。今度、台北を訪問する時には行先候補地に必ず入れたい、という思いも込めて、書き留めた次第である。

なお、迪化街訪問後は、寧夏夜市で夕食を食べて、タクシーで桃園の宿に戻った*1寧夏夜市との近さも、迪化街の特筆点といえるかもしれない。

*1:ちなみにタクシーで帰ってもわずか800元程だった。4人でワリカンすれば1人あたり200元程度。新幹線で帰るよりよっぽど安い…

台湾・桃園、永和市場周辺にて

2月27日から4泊5日間の日程で、学生を連れて台湾を訪問してきた。実は、ここ数年、この時期の台湾行きが恒例行事になっている。いつ訪れても衝撃を受けるのは、台湾の個人商店のパワフルさである。定宿にしているホテルの近くに、永和市場という市場があり、その周辺にも商店が拡がっているのである。

 

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とくに印象的なのが精肉の売り方である。冷蔵ショーケースがあるわけでも、パックされているでもなく、肉の塊が直接外気にさらされる形で陳列されている。フツーの日本人がこれを見ると、「衛生的に大丈夫なのか?」と思ってしまうだろう。しかし、台湾ではいたるところでこの売り方を見かける。問題のある売り方であればとっくに駆逐されているはずだから、この売り方でも大きな問題は生じていないのだろう、と勝手に推測するところである。

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もう1つ、この売り方のメリットは、売り手と買い手のコミュニケーションだろう。台湾語がわからないので確たることは言えないが、聞き耳をたてていると、明らかに取引とは無関係のことをおしゃべりしているようである。

自分たちは何を食べているのか? どの部位を食べているのか? この売り方なら、そうしたことへのイメージもごくごく自然な形で沸いてくるだろう。捌いている途中の豚足なんて、なかなか見る機会がない。いわんや豚足の毛を抜く作業をや。

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素食(野菜料理)のお店で朝ごはんを食べることにした。言葉が通じないので確たることは言えないが、どうやらベトナム系のお店のようだった。そこそこ人気のお店のようで、ひっきりなしにお客さんが入ってくる。みんな、思い思いの食材を紙の器にとり、測りで測って、重さに応じた金額を払っていた。

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われわれは店内で食べて帰ることにした。同僚はお粥のうえに思い思いのおかずを載せた。僕はご飯の上にあんかけをかけたものをいただいた。

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永和市場の中にも入ってみた。この建屋は2階より上は使われていないように見える(廃墟なのか?立駐なのか?)。近々、MRTを整備し、ここに駅をつくる予定があるとのことだが、その関連上、上階層の住人やテナントは既に立ち退いているということだろうか?

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市場の売場は地下1階にあるので、エスカレーターに載って潜ってみる。エスカレーターを下りながら目に入ってきたのは、かしわ屋の若い従業員たちがおしゃべりしながら肉をたたき切っている光景…。すばらしい!
それと、地下空間にまでバイクが入ってきているのにも驚いた。一般消費者なのか商店主なのかはわからないが、台湾では、買い付けの足として車よりもバイクの方が有用なようである。

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市場の前の道。とにかくバイクが多い。市場ないし周辺の商店に買い付けにきているバイクが多そうである。渡るだけで一苦労である。

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どこの部位だろう? 台湾語がもっとうまければ、店の人に聞いてみるのだけれど…

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道にせり出した陳列台に、ニワトリが丸々陳列されているのには驚いた。とはいえ、買付けに来る人の視点に立つと、バイクで横付けしやすいところの方が買い物しやすいのである。

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こちらは素食の材料を販売するお店。こういう店が町中いたるところにある。台湾の野菜食文化は、日本の数倍進んでいるように思う。
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地べたに商品を陳列している人たちは、お互いにおしゃべりしていて楽しげ。どこかに場所代などを払っているのだろうか? 語学力があれば聞いてみるのだが…

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以前食べたもち米のおにぎりの味が忘れられず、市場の周辺地区を探し歩くこと10分。ようやく見つけた。

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おばちゃんの作業の手際がこれまたいい! 調子に乗って動画も撮影させていただいた。終盤、油條とよばれる揚げパンのようなものを載せている。これがまた適度にカリカリしつつ、ご飯の水分を吸って適度にシンナリしていて、おいしいのである。

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おにぎりの店の隣りには、ねぎ焼き(?)の屋台があってこちらもおいしそう。

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ところで、台湾的な精肉の売り方*1は、なぜ、日本ではポピュラーではなくなってしまったのだろうか?

おそらくは、食肉販売業許可だとか、食品衛生法だとかいった、法制度の影響があるだろう。

とはいえ、それだけではなく、日本においてパック詰めの販売方法が、小売業者・消費者の双方から大きな支持を集め、普遍化していったことも無視できない。

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関連する議論としては、流通論の教科書的なところでいうと、まず「関スパ方式(関西スーパー方式)」が思い浮かぶ。「関スパ方式」の画期性の一端は、専門技術をもった「職人」に頼らずとも、従業員やパートが刺身やスライス肉をつくることができるよう、職人の作業工程を分解・標準化し、マニュアル化を徹底したことであろう*2。客から必要量をオーダーされてから肉を切るのではなく、あらかじめ切り身ないしスライスにしたものをパックしておく、という販売方法も、上記の議論の延長線上に位置づけることができる。

サミットの敏腕経営者であった安土敏(荒井伸也)さんも、この「関スパ方式」に大きな影響を受けつつ、『日本スーパーマーケット原論』*3を著した。そこでもやはり、生鮮食品を、「職人」に頼らずに、安定的に提供するためにはどうしたらよいか、という問題意識が前面に押し出されている。ついでにいえば、この考え方は、安土さんがアドバイザーとしてかかわった映画『スーパーの女』(監督:伊丹十三;1996年)でも、とりわけ物語後半の重要なモチーフとなっている。ご興味のある方は併せてご参照いただきたい。

ともあれ、パック詰めの販売方法は、さほどの専門技術をもたないスタッフであっても、生鮮食品を提供するためにはどうしたらよいか、という問題意識の中から生れてきた。ボリュームゾーンの商品(大衆魚の切り身やコマ肉)を、安定的かつ安価に提供するために、「職人」に頼らない販売方法(ないし販売システム)が求められたのである。

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とはいえ、安価かつ安定的供給のために「職人」の専門技術・知識を排除するようなやり方は、モノが絶対的に不足していて、なおかつ、国民の所得水準もまだまだ低かった時代(戦後からせいぜい高度成長期くらいまでだろうか…)の価値観を引きずっているようにも思う。成熟社会を迎えた今、改めて「職人」的知識・スキルの重要性を再評価する価値観も、一定程度拡がってきているのではなかろうか。

また、パックされた肉や魚が、消費者たちの「退化」を招いている、と考えることもできる。なるほどたしかに、パックされた商品のラベルには、部位、産地、賞味期限に関する情報が掲載されている。けれども、われわれ消費者は、そうしたシステムのつくりだす、一見強固でありながら実際には脆弱な信頼に甘え、自ら品質を見極める能力を退化させてきたのではないか。

台湾的な売り方ならば、買い手は肉の塊と直接向き合うことができる。どこの部位を何g買うべきか、買い手が自分で考えることができる。場合によっては、調理方法や加工方法について売り手に教えてもらうこともできる。さらにいえば、消費者は日々の買い物を通して目利き力を鍛えていくことができそうである。ぜひ22世紀まで残していただきたい販売方法だと思った。

*1:といっても、台湾においても、この売り方はもはや主流派ではなく、パックされた肉をスーパーで購入する消費者の方が多数派になっているかもしれないが…

*2:もちろんマニュアル化だけが「関スパ方式」の全貌というわけではなく、セルフ販売のための買い物カゴや、生鮮食品を運搬するためのカート、バックヤードの冷蔵設備、売場の冷蔵ケース、パッケージ用フィルムの開発など、他にも重要な要素がある。この点について詳しく、かつ手頃な教科書としては、崔相鐵・岸本哲也編著『1からの流通システム』第6章(中央経済社、2018年)がおすすめである。https://www.amazon.co.jp/dp/4502261912

*3:https://www.amazon.co.jp/dp/4827601259

拙稿

マーケティングジャーナル』(日本マーケティング学会)に寄稿の機会をいただいた。

衰退商業地における新規開業事例に関する研究

松山市三津は県都松山の外港として栄えた港町である。しかし、1980年代頃より衰退が始まり、シャッター街化していた。いや、厳密にいうと、シャッター街化の次のフェーズまで進んでしまっていた。つまり、閉鎖店舗が取り壊され駐車場化されてしまった事例や、閉鎖店舗が住居へと建て替えられてしまた事例が目立つようになっていた。

しかし、2010年代に入ってから、新しい感覚の商店主たちが存在感を発揮し始めた。具体的には、練や正雪、田中戸、N's kitchen**&labo、みつうつわ、餃子のぶ、あかり、Bitter & Sucre、リテラ、とぉからなどである。また、そうした店舗ができる以前から、「三津のリトルイタリアン」ことFLORが孤軍奮闘してきたことも忘れてはならない。

さらにいえば、ミツハマルができたことで、空き家や空き店舗のマッチングが円滑化されたことも、店舗や移住者の微増を考えるうえでは無視できない要因である。

とはいえ、僕自身は、上記のような流れの形成を考えるうえでは、やはり、練や正雪、田中戸、N's kitchen**&laboあたりの出店プロセスが重要であると考えている。

今回の論文では、松山市三津地区でパンの製造小売業を営む N's kitchen**&labo の小池夫妻と、かき氷が人気の喫茶店・島のモノ喫茶田中戸の田中さんにヒアリングした結果をまとめている。

また、上記の流れの形成を考えるうえで、三津地区の家賃相場が低下してきたことも大事である。類似する他の衰退商業地においては、まちそれ自体は明らかに衰退しているにもかかわらず、バブル期の感覚の抜けきらない家主や地権者の存在によって、家賃相場が高止まりしてしまっている事例も散見される。ここから、なぜ三津地区では家賃相場を下げることができたのか、という疑問が生じる。

この点に関して、僕自身は、長らく三津浜商店会の会長を務めてこられた男子専科ヤング(紳士服店)の丸山さんの存在が大きいと考えている。近年こそその役割をミツハマルに譲っているものの、丸山さんは、三津への出店希望者のために、物件を斡旋したり、家賃相場の適正化のために家主へのはたらきかけをおこなったりというように、今でいえばエリアマネジメントと言えるような取り組みに力を注いできたのである。丸山さんがいなければ、新しい感覚の商店主たちが三津に集積し始めるきっかけは得られなかったのではなかろうか。

以上のような観点から、今回の論文では、丸山さんへのヒアリングもおこなっている。

小池さんにしても田中さんにしても丸山さんにしても、普段からお世話になっている方々である。お世話になった方々の取り組みを活字化できてよかったと思う一方、まだまだ、整理の仕方に粗もあるし、ひょっとしたら当事者たちが本意としないまとめ方をしてしまっているかもしれない。そのあたりの不安はあるのだけれども、三津のまちに通うようになってからもう5~6年経ち始めていることもあって、そろそろ何がしかの中間報告が必要ではないかという感覚もあった。ありうべき誤謬は真摯に受け止めたいと思っているので、ご興味のある方はご高覧いただきたい。

 

大三島にて

昨日は、友人夫妻とウチの夫婦のダブルデート(?)で、大三島に行ってきた。オミシマコーヒー、猪骨ラーメン、みんなの家(みんなのワイナリー試飲会)、大三島ブリュワリーを回った。こうやって振り返ってみると、ただの食べ飲み紀行である…

 

オミシマコーヒーのコーヒーカップ小鹿田焼

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ベイクドチーズケーキもおいしかった。上に乗っているレモンの砂糖漬け(?)は無農薬のレモンを使っているので、皮ごと食べてくださいとのこと。

カフェスペースで飲ませてもらったエチオピアの豆(浅煎り気味)が気にいったので、200gほど購入していくことにした。

 

猪骨ラーメンは予想以上に並んでいた。そして僕ら一行のところでスープが打ち止めになった。ギリギリセーフ。

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大三島の猪骨ラーメンの取り組みは、クラウドファンディングで資金を募っている頃から注目していて、実は僕もお金を出させていただいた経緯がある。

イノシシを使った「猪骨ラーメン専門店」を開業して、しまなみの獣害対策&新名物誕生を!|ふるさと納税のガバメントクラウドファンディングは「ふるさとチョイス」

目標額を達成して、めでたくお店ができたことは知っていたが、なかなか大三島に足を運ぶ機会がなく、なんのかんので初訪問。プレートに自分の(研究室の)名前があるのを確認して、ちょっと嬉しくなる。

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気になるスープは、冷めたら固形化しそうなくらいのトロみがあり(かといって餡かけほどトロみがあるわけでもない)、適度なクセがありつつもかといってありすぎず、おいしかった。個人的には、横に添えてくれていたローストビーフ的なやつ(ローストポーク)がおいしかった。猪の腿の肉を使っているそうである。

 

そしていよいよこの日のメインイベント、みんなのワイナリー試飲会へ。先日、bamatsukaiにゲストで来ていただいた宮畑さん*1某国営放送局のYさんなど、お知り合いともおしゃべりできて、楽しい時間を過ごす。

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みんなのワイナリープロジェクトを引っ張る川田さんが音頭をとって、乾杯。メディアで拝見することはあるけど、生・川田さんは初めて。二言三言お話しするも、お名刺は交換せずに帰ってきてしまった。いつかまた…

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この日は、アルコールを飲めない人向けにぶどうジュースもふるまわれた。見た感じ、ココアみたいな色目ですが、無濾過のぶどうジュースはこんな色なんだそうです。妻に味見させてもらったが、たいそうおいしかった。

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ワインのアテになる料理も用意されていた。食べ散らかされる前にすかさず写真をとりまくる。

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川田さんによるみんなのワイナリープロジェクトの説明。こういうの大事ですよね。

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当日、味見させてもらったワインは、ボトルで購入することもできる。

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以下の4種類が購入可能であった。

  1. シャルドネ100%」
  2. 「ベーリーA 100%」
  3. 「ベーリーA 93%;ヴィオニエ 7%のブレンド
  4. 「ベーリーA 95%;シャルドネ 5%のブレンド

個人的には3.が一番おいしいと思ったが、赤のベーリーAに白のシャルドネブレンドした4.も適度な酸味があっておもしろい味だと思った。また、シャルドネ100%(つまり白ワイン)の1.も、その辺のお店で飲むシャルドネのワインよりも芳醇。当日、会場に居合わせた人ともおしゃべりしたが、やっぱり大三島シャルドネは近辺のワイン好きの間でも「おもしろい!」ということで、評価を確立しつつあるようである。

結局、1.を2本、3.と4.を1本ずつ購入。1.を余分に購入したのは、仕事関連でちょっとやらかし、ご迷惑をおかけした方がいるため。せめてものお詫びに。

最後は、大三島ブリュワリーにも立ち寄ってから帰ることに。 

さてここで、この日の散財額をメモしておこう。オミシマコーヒーで3000円強、猪骨ラーメンで1500円ほど、試飲会の参加費が2000円+1000円=3000円、ボトルで買ったワインが計15000円強、ブリュワリーで1500円強。トータルで26000円くらいは使っている。夫婦2人の額なので、1人あたりの額に直すと13000円。それでも1万円超である。

やっぱり、本気でつくっているものには、ついついお金を払いたくなる。すごいな~。いずれも、数年前の大三島にはなかったものである。